コグニティの会話解析AIサービス「COGシリーズ」で、
ビジネスシーンにとどまらない、
あらゆるコミュニケーションを見える化するプロジェクト
『目からコグ!』

今回は「世界一貧しい大統領」として有名になった、ウルグアイ元大統領ホセ・ムヒカ氏(以後、ムヒカ元大統領)の伝説のスピーチを採り上げます。2012年6月にブラジルで開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」での氏のスピーチは、環境問題や平和に対する従来の価値観に大きな一石を投じた衝撃的なものでした。書籍や絵本化もされたりもしたことから、記憶に残っている方は多いのではないでしょうか。
一般にビジネスシーンや公的な場で好ましいとされているスピーチは、なぜその主張をするのかといった「理由」「根拠」が語られるものだと言われますが、なぜムヒカ元大統領のスピーチは多くの人に感動を与えたのでしょうか? その特徴を、早速見ていきましょう。


特徴① 客観的根拠と具体的説明を同程度話している

国の要職に就いていながらも、収入の9割は寄付するなど庶民と同等な”清貧の暮らし”を是としたムヒカ元大統領は、スピーチで「大量消費と資源の浪費が自然を破壊している今のままでは、地球はもたない、生き方を変えていかなければ」と主張しました。貧富の格差や貧困が大きな社会問題化している現代のグローバリズムや消費主義に対して疑問を投げかけたのです。

スピーチがどのような内容で話されていたかを分類すると、特徴的なのは「背景理由・効能など客観的根拠説明」と「具体的な説明」が同程度で話されている点です。
UpSighterにより多数の大企業のプレゼンを分析してきた結果、自分の「思い」や「理由付け」を増やすと、聞き手の共感を得やすくなることが判明しています。
安倍首相のスピーチと比較してみるとどうでしょうか。安倍首相の場合は「主張を補完する具体的な説明」が多いのが特徴になっています(図1)。

図1:トークの構成

図1:トークの構成

図1の説明


特徴② 会話のように質問を投げかけながら話す

スピーチは、ひとりの話者が多数の聴衆に向けて発言するものであり、会話ではないため質問に対する応答はほぼないと思われがちです。しかし、ムヒカ大統領の場合は図2のように、会話のように質問を投げかけながらスピーチをしていることが分かりました。質問の種類としては、自由な解答を求めるOPEN質問よりも、YesかNoで単純返答できるCLOSED質問が多用されています。

(図3:「質問の種類別出現数の比較」より作図 左:ムヒカ元大統領、右:安倍首相)

図2:「質問の種類別出現数の比較」より作図 左:ムヒカ元大統領、右:安倍首相)


特徴③ ひとつの主張を軸に話を展開

では、スピーチがどのようなストーリーで展開しているかを見ていきましょう。図3から、安倍首相のスピーチは、ストーリー建てた中でも補足説明が続く、日本人に受けやすい喋り方をしています。一方、ムヒカ元大統領は、ひとつの話題にいくつものオプション説明を出す説明の仕方になっています。

図3:トークの展開

図3:トークの展開


ムヒカ元大統領のスピーチが印象的な理由

以上から、ムヒカ元大統領のスピーチの特徴をまとめてみます。
 ムヒカ元大統領の特徴
・話題のポイントを絞って具体的に説明
・会話のように質問を投げかけながら話す
・ひとつの主張を軸に話を展開
 安倍首相の特徴
・話の起点となる意見や提案がある
・いくつかの話題を淡々と話す
安倍首相のスピーチと比べて、ムヒカ元大統領は、違った特徴が見られました。この違いが印象的なスピーチと言われる理由のひとつかもしれません。

このように、違うタイプのスピーチを数値で見える化することにより、なぜそのスピーチが「印象的」なのか、あるいは「違う」と感じるのかを客観的に把握することが可能になります。
ビジネスシーンにおいても「デキる」と言われる営業マンがそう言われる理由、あるいは、説得力があると感じる話し方にはどんな要因があるのかなど、異なるタイプの営業マンの違いをまず見える化することで、課題が把握しやすくなるはずです。
今回は2人の政治家のスピーチを例に挙げましたが、みなさんが会社や学校で印象的なプレゼンをするポイントを最後にお伝えします。多くの有名企業のプレゼンを会話解析AIサービス「COGシリーズ」で分析を重ねた結果、“伝わるプレゼンの極意”としては、すぐに行動を起こしてもらいたい場合は「思い」を、長く記憶に残してほしい場合は「数字」を伝えると効果的だという傾向が出ています。

プレゼンの極意をさらに詳しく知りたい方は、2019年11月21日(木)深夜放送のNHK Eテレ「プロのプロセス」にて代表・河野理愛がプレゼンの極意を伝授しますのでぜひご覧ください。

 


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